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№493 八甲田山麓、蔦温泉

№493 八甲田山麓、蔦温泉
 仕事で青森に行ってきた。金曜日の午後6時、青森空港に到着したが、泊まる宿は決めていなかった。空港についてレンタカーを借りて、1時間程度で行けるところを探したところ「蔦温泉」が目にとまった。
 
蔦温泉、どれくらいでいけるかね。」
「1時間ぐらいだべ。」
「一人だけど今から泊めてくれるだろうか。」
「ねぶたの時は無理だろうけど、今頃だったら空いているよ。」
 
 そこで、蔦温泉旅館に行った。
 蔦温泉の歴史は1147年にさかのぼる。旅館に残る古い板には久安3年に小屋を建てたと書いてあったそうだ。宿としての創業は明治42年で、宿にはその面影が強く残っていた。私が泊まった部屋は昭和30年代にできた別館だったが、いかにも古い感じがとても良かった。
 
 温泉の帳場は畳部屋だ。新しい旅館のようなスマートさはなく、どこかの田舎のおうちにお邪魔したする感じだ。こたつが置いてあり、買い置きたばこを入れるガラスの小さな棚があった。蔦温泉のお風呂はヒバでできていて、とてもよいにおいがした。天井が高い。古さに相応した材木のくすみがある。
 
 蔦温泉の周辺はいくつかの湖がある。蔦沼はみごととしか言いようがない。水際までブナの林が迫り、沼を樹木が取り囲んでいる。遠くには八甲田山の白い姿があって、湖面に映っている。朝にはガスが立ちこめるのだが、それが雰囲気をいっそう神秘的にする。じっとしていると溶け込んでいきそうな気がする。
 
 湖を生み出している森にはブナやシイ、ホウの巨木があった。大蛇のようにくねったブナの巨木を見ると涙が出るほど感動する。ブナにはブナの哲学がある。それは私たちにはけっして分かることのないブナの哲学だ。「山の神」がいても不思議ではない。