名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№462 事業譲渡と第二次納税義務

№462 事業譲渡と第二次納税義務

 知り合いの会社は長年固定債務に苦しんできました。今回、事業譲渡の話がありました。知り合いは私の会社に事業を譲渡して、会社を整理し、社員の雇用を守ろうという考えです。社長が社員のことを思う気持ちや、事業自体は良好で私の会社にもメリットがあると思い、事業譲渡に応じ、実行しました。
 ところが、税務署が「第二次納税義務がある」と言って、友人の会社の税金を払うよう言ってきました。旧会社の債務は引き継がないはずですが、どうして、旧会社の国税を私の会社が払わなければならないのでしょうか。

 事業譲渡は財産、債務、個別に移転する。合併や企業分割の場合は包括的に承継される。この違いから、事業再生では事業譲渡が幅広く利用される。事業組織や顧客(のれん)だけ譲渡して、税金や借金を古い会社に残してしまうの方法だ。
 
 ところが、国税徴収法39条には第二次納税義務というのが定められていて、一定の場合に、他人の税金を支払わなければならないことがある。事例は国税不服審判事例で、事業譲渡に伴い売掛金が無償の債権譲渡とみなされて、無償部分について第二次納税義務が課せられた事例だ(H20.6.30 裁決事例№75 760頁)。
 
 第二次納税義務の要件は次の通りだ。無償譲渡であることが本件の問題点だ。
① 滞納者が無償、低廉な対価で譲渡など第三者に利益を与える処分をしたこと。
② この無償譲渡等の処分が、国税の法定納期限の1年前の日以後にされたこと。
③ 滞納者の財産について滞納処分を執行してもなお国税に不足すると認められること。
④ ③の国税に不足すると認められることが、無償譲渡などの処分に基因すること。
 
【教訓】
 この事件では、そもそも、売掛金が譲渡とされてしまったところにある。事業譲渡の契約書をきちっとしていて、譲渡後の収益として、売掛金が発生すれば、自社の債権となり。つまり、譲り受けた債権とはならない。その場合は第二次納税義務の要件を満たさないだろう。
 
 事業譲渡について対価を考慮しなかった点に問題がある。例えば、事業譲渡時に売掛金に対する対価を決めておき、何かで相殺することができれば、やはり第二次納税義務の要件を満たさなかったのでは無かろうか。
 
 いずれにしろ、企業の債務整理などに当たっては第二次納税義務の問題も射程に入れておくことが肝要である。