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№449 ピーター・ドラッカー

№449 ピーター・ドラッカー
 ピーター・ドラッカー(Peteer F. Drucker )と言えば、昨今の実業家の間ではすっかり神格化されている観があって、むやみにドラッカーの言葉が引用されている気がする。
 
 そのため、私は長くドラッカーを読む気になれないでいた。でも、やっぱり、中小企業法務の確立をめざそうという立場からはドラッカーは避けて通れない。まずは、「マネジメント」(日経BP社)から読み始めた。
 
 読み始めてドラッカーがもてはやされる意味が分かる気がした。1973年に著されたこの本は現代社会の客観的な記述にとどまらない面持っていると思われる。それは、何らかの形で歴史を前進させる意欲的な個人のあり方も含んでいる。確かにドラッカーは時代が求めている思想を示している。信奉者が多いのもしかたがない。
 
 まだ、読み始めたばかりだが、なんだか私は「灰色の脳細胞を刺激され」、いろいろ考えたくなってしまう。
 現代社会は多元的な価値観を前提とする自由な社会だ。私の信条として自由なくして人間の発達や、尊厳の維持はあり得ない。
 一方で、現代社会は組織が高度に発達した社会だ。組織なくして大きな仕事は成し遂げられない。なんらかの形で組織は求められている。それが、インターネットを利用したフレキシブルな関係であっても組織を無視することはできない。
 
 ドラッカーの「マネジメント」はこの問題を分析しようとしているように思われる。
 ドラッカーはマネジメントは難しい言葉だという。「『マネジメント』は職能を表すと同時に、その職能を担う人々をも指す。」、「組織は実際のところ、それ自体がフィクションである。・・・組織のなかの誰かが、組織の一実情の手足としてその仕事をしている。」
 
 このあたりが、ドラッカーの姿勢の基本だろう。つまり、組織のあり方とはその組織を構成する個々の人々のあり方を探求することによって初めて意味を持つし、その逆も必要だ。ドラッカーの言葉が示唆に富むのは、組織を作り、動かすシステムは人のあり方によって決められていくという、組織と人との不可分な関係に注目しているからだろうと思われる。
 
 ドラッカージーメンスの次の言葉を引用しているのは興味深い。
「マネジメントが存在しなければ、銀行など廃材の山のようなものにすぎず、解体するほかないだろう」