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№443 契約途中解約

№443 契約途中解約
 中小企業法務でしばしば問題になるのが契約の途中解約である。

 長く商品を供給する契約を継続的商品取引というが、この途中解約は信義則上制約されることがある。長い取引を前提に準備したのにいきなり打ち切るのはひどいではないかというのである。

 この外にも契約が途中で打ち切られた場合のトラブルはけっこう多い。

 請負工事ではしばしば1期、2期と進行を区切られることがある。受注業者としては1期、2期と全体を引き受けたのであるが、いろいろ理由をつけられて1期で工事を打ち切られてしまう。受注する側はお金を受け取る側だからけっこう立場は弱い。

 例えば、受注側が問題があった場合、例えば工事の質が悪いとか、納期が遅れるとか行ったような問題がある場合には、発注側は債務不履行を理由に契約を解除できる場合がある(民法415条)。

 そうでなくても、請負契約の場合、受注側はいつでも契約を解除できるとする条文がある(民法641)。しかし、それでは業者はつらい。そこで、民法はその場合は損害を賠償しなければならないと定めている。

 この賠償は履行利益とよばれるもので、請負が完了した場合に得られるであろう利益を示す。だいたい粗利から、所定の人件費を差し引いたぐらいの金額だと考えればよい。上記の1期、2期の場合、2期まで含めて全体が一つの契約であれば、業者は2期を受けていたら得られたであろう利益を請求できることになる。

 ここまでは教科書程度の話で、学生だって答えられる。

 さて、中小企業の場合、契約書を作らず、納品書とか発注書だけで工事に入ることが多い。その場合、例えば、1期で当初の請負契約は終了したので、2期の打ち切りは契約の打ち切りではない、新規の契約を結ばなかっただけという反論が予想される。

 この場合、取引経過、とりわけ請負代金の決め方、などを総合的に考えていくのだが、ここのところは弁護士と協議なしでは判断できないだろう。弁護士の専門性はこういうところで発揮される。 

※ 民法第641条 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。