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№427 どろをかぶるつもりでなければ

№427 どろをかぶるつもりでなければ
 最近は債務の相談ばかりで、ちょっと疲れ気味です。

 中小零細企業の場合、追いつめられるとどうにもならなくなる。

 資金繰りに窮し、100万円の資金繰りをどうするか、極端に言うと、あすの50万円をどうするか、というようなぎりぎりのやりくりをする。一応生き延びているため、本人にしてみれば、綱渡り経営をしていると考えている。

 かつては1億円とかの借金があって、毎月200万円近くの返済をしていた経営者からみると、わずかなお金のために命を削る思いをするのは情けないことだろう。それは、経営をしているとは言っても、これは、瀕死の病人がかろうじて呼吸をしているようなものと言える。いつ心肺機能が停止してもおかしくない。

「ぎりぎり経常利益が出ていますから、思い切って、この銀行の支払いを停止してはどうでしょうか。このまま支払っていても先が見えません。むしろ、仕入関係の資金が無くなって身動き取れなくなっています。」
「それは分かるのですが、過去にしがみついているというか、これまでつきあってきた仲間たちに合わす顔ができなくて。それに銀行とつきあいが無くなっても経営できるでしょうか。」

「しかし、このままでは資金ショートして仕入れることもできなくなります。外注や協力会社に逃げられたときにはどうやって経営するのですか。
 銀行に支払えない場合は保証協会に債権が移ります。今の保証協会であれば、ちゃんと経常利益があることを示して、少しずつ払っていけば抵当権の実行を待ってくれます。」
「そうなんです。資金が足りなくて、いい商品の仕入れができないのです。」
「銀行の支払いを止めれば、かなりお金を貯めることができます。どうして、それが分からないのですか。お金を使う場所が間違っています。」

 この経営者とは、こうした会話がすでに3ヶ月ほど続いている。そうしている間にやりくりの規模がどんどん小さくなっていく。最初のころは、明日の200万円をどうするかが問題だったのに、いまでは明日の30万円をどうするかということで泣いている。仕入れ資金が無くなってきて,商売が急激に小さくなったからだ。

 破産、銀行への支払い停止というドラスチックな行動におそれをなしている。よくよく聞いてい見ると、経営者勉強会での仲間たちに顔向けができないとか、そういったプライドも邪魔している。どろをかぶれない2代目の弱さかもしれない。私に言わせれば、愚かな迷いだ。

 ちゃんとした人間関係があれば、経常利益は出ているのだから、家族経営を行い、信頼できる仲間に外注に出すことによって経営は維持できる。

 もちろん、債務支払いを停止すれば、銀行とのつきあいは無くなる。仕入れや販売ができないというリスクも背負い込むことになる。しかし、支払いの緻密に計算することで回避できることがある。要は、取引先を大事にして、銀行などの金融機関を後回しにするということになる。

 さらに、根雪のような長期固定債務に対する法的対処を考える。それは破産であったりする。破産はよく勘違いされるが、事業再生としても機能するのだ。