名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№426 中小企業をめぐる金融の情勢

№426 中小企業をめぐる金融の情勢
ここのところ、金融に関する相談が多い。中小企業法務を実践する者としてはこの点について整理する必要がある。
相談の傾向はかなりはっきりしている。そこで、最近の状況を整理してみたい。
自分のために整理する文書なので、堅そうで回りくどくなりますが・・・・

 2008年末来の金融不況が始まり、厳しい情勢が続いている。

【情勢の概括】
 中小企業の金融は2008年末まではあいかわらず厳しい対等続いていた。しかし、「暴力的」な不況の下、その対応策としてセイフティネットの積極活用など、徐々に金融緩和政策が始まり、新規貸し付け、条件変更などについても柔軟な対応が浸透しつつある。昨今の金融機関、とりわけ保証協会など政府系金融機関の対応は2年前とは隔世の感がある。

【金融円滑化法の提起した問題】
 2009年の金融円滑化法は一連の金融政策の一つと言って良い。同法については表面的に取り繕うのみで、銀行の本質は変わっていないという見方もある。このような見方は銀行出身者に多い。銀行が企業体であり、経営の持続性を考えればドラスティックな試作変更はあり得ない。

 重要なのは「表面的」とされている変化の分析だ。この変化が現実を動かしているかどうか、公器としての銀行の機能強化につながっているのか、この変化は今後さらに発展させるべきものか、つまり、不況下のみならず景気回復後に維持されるべきものであるか、こうした視点での分析が必要だし、専門家に求められている。

【円滑化法の効果】
 円滑化法によって、銀行窓口は確かに丁寧になった。従来なら経常利益や担保しかみないように見受けられる厳しい姿勢が、とにもかくにも経営相談につながるような総合的な対応をするようになった。不況に伴う経営状態の悪化を直ちに企業の信用などの低下と見ない傾向になりつつある。現在のリスケがあっても、早い時期に回復すれば格落ちにはならないと気がする印象を持てるようになっている。この傾向についての正確な評価は早急に行いたい。

【最近の傾向のまとめ】
 2009年末ころに比較すると信用保証協会などの公的機関対応は大きく異なっている。私たちは、この間、愛知県信用保証協会や東海財務局との懇談、聞き取り調査を実施した。相談から判断できる金融機関の対応は次の通り。

(ア) 全体の傾向
① 連続赤字あるいは抵当権や連帯保証人などの人的・物的担保欠如など、追加融資などの阻害要因となっていた事情が必ずしもそうではなくなってきた。従来のマイナス要因が絶対的ではなくなっている。
  ② 事業計画などの見通しについても、従来よりも緩和して判断するようになった。計画事態の確実性よりも、経営者自身の経営管理能力や後継者の有無といった、企業の持続性を定性的に判断するようになっている。

(イ) 信用保証協会の動き
  ① 直接の窓口を設けて、事業者の相談に直接姿勢を積極的にしている。取引銀行を介さず直接相談に乗ったり、取引銀行が無くても相談窓口で対応し、信用保証協会が提供している各金融商品の利用について相談に乗る姿勢を示している。
  ② 緊急保障制度、経営安定関連保証制度、小口零細保証制度など、責任共有制度対象外の金融商品等があり、いくつか柔軟に対応するようになっている。

(ウ) 金融庁
   金融検査マニュアルの徹底を進め、各金融機関に対する定性的評価能力の強化を指導している。金融機関の不当な対応についての相談窓口となっている上、金融検査マニュアルのあり方についても積極的な説明会を実施している。金融庁自体、「目利き」的融資を促進しようと力を入れているし、実際に指導を求めることができる体制になっているようだ。