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№414 健全な魂に健全な肉体はやどる(中小企業経営)

№414 健全な魂に健全な肉体はやどる(中小企業経営)
 長期債務が消えない残雪のようにつもりにつもっている場合、屋台骨は支えきれない。あるとき何かをきっかけにクラッシュする。最近の不況は常軌を逸しているが、実は倒産のきっかけを与えているに過ぎない場合も少なくない。倒産の本当の原因は別にある場合がある。というか、別にあることが多い。
 
 調子の良いときに無借金経営を目指さなかった。「借金の量は銀行からの信頼の証」、とたかをくくっていた。銀行に言われるままに、つきあいで借金をたくさん持ってきた。預金がたくさんあるから借金しても大丈夫、などなど。

 中小企業の場合、会計の公私混同も倒産の大きな原因だ。眼の前の売り上げに目がくらみ、社長が会社のお金を抜き取っていく。よく分からない交際費、会議費などが出てくる。高級自動車を買ったり、絵画を買ったり、果ては自宅まで購入したり。企業体力ということに目を向けない経営が、借金を膨らませていく。

 ある会社の事例だが、社長死亡後、息子が会社を継ぐべきかどうかといった相談を受けたことがある。創業者の父親が亡くなって、継母がいるのだが、継母には経営能力は全くない。そこで、長男に白羽の矢がたったのだ。しかし、とんでもない債務が残っていた。息子の妻は怖がって 、やめてくれと泣いている。「主人には経営する力はないんです。」「主人はお坊ちゃんで、現実の厳しさが分かっていないんです。」

 会社を調べてみると、確かに経営状態は悪かった。膨大な長期負債がつもりにつもっている。これは亡くなったお父さん、会計を担当していた継母が公私の混同を繰り返し、いろいろな理屈をつけてお金を抜き取ってきたからだ。中小企業では私的費用を経費で落とすのは当たり前だというおバカな考えが会社を悪くした。

 しかし、息子は人生で社長を経験できる人は少ない、少ないチャンスを生かして冒険したいと奥さんの言葉を振り切って跡を継ぐことを決断した。この会社はちゃんとした収入はある。三河地域を中心に商品は安定的に売れている。
 長男は経営コンサルもできる税理士に換え、徹底的に会計の合理化、近代化をはかり、コンプライアンスも徹底させた。

 会社は3年ほどで持ち直し、その後は借金が減っていった。そして、この不況下でも耐える体力を維持している。 。