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№403 中国製造食品を直接取引した事例

№403 中国製造食品を直接取引した事例
(中小企業法務)
 大手企業はどん欲な野獣のようなところがある。利益をあげることが善だ。そのために相手がどんな努力をしてきたかお構いなし、それは自由競争だというのである。大手企業全てがそうではないが、中には、商売の信義をわきまえない、馬鹿者が存在する。

 本件商社は中国食料品の貿易を目的とする株式会社の事例である。
 松屋フーズはこの商社を通じて食料品を購入していた。ところが、松屋は水面下で交渉を進め、ある日突然、中国生産者と直接取引してしまった。そのため、商社は松屋に対して損害賠償請求した事例である(判例時報2009号106頁)。

 東京地裁松屋の一方的解約に対して責任を認め、448万円の支払いを命じた。448万円というのは商社の4ヶ月分の利益に相当する。商社の請求金額が約1億1294万円だから、実質的には商社の敗訴判決だろう。

 本件での取引の開始が平成13年8月であり、打ち切りの通告が平成16年8月ということで、3年間継続していた。

 松屋といえば大きなフランチャイズだから、商社にとっては大きな打撃だろう。商社は松屋のために中国国内の優秀な工場を探した。松屋のために中国に現地事務所を設置し、人材を養成し、松屋の要請に対応できるよう工場に対し、技術指導をした。

 長く続くだろうと言うことを期待して整えてきたインフラをどうしてくれるんだというのが商社の言い分である。

 こうした、長く続くことを前提にした契約を継続的取引契約という。中小企業が安定した事業をするために、どこかに継続的に納入することが好ましい。しかし、これは一方で、死活問題を取引先に握られることになり、中小企業としての自立性、独立性が害されることになる。商品価格についてイニシアティブを握ることができない。

 本件判決は商社と松屋との継続的取引関係は否定した。しかし、いきなり打ち切るというのはいかにもひどい、商売の信義に反する。というので、「信義則」と言われる法理を用いて4ヶ月分の賠償を認めたのである。

【教訓】
① 本件では継続的取引を前提にした契約書ができあがっていなかった。直接取引をしないという契約や松屋が撤退する場合のルールについて定めておく必要があった。
② 松屋は直接取引をしたのであるが、商社は中国企業との信頼関係を維持できていなかったことになる。ここでの共同関係に関する契約をきちっとすべきだったということになろう。