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№398 おもしろ「農」経営教本

№398 おもしろ「農」経営教本
(中小企業政策)

「おもしろ「農」経営教本」(長谷山俊郎著)を読んだ。
この本はフードシステムに関する総論的な議論が示され、モクモクファームなどいくつかの「農」に関する事業が紹介されている。

農業は食料生産の場であるが、直ちに消費者の「食」に結びついているわけではないという。生産された食料を消費者が口にするまでに、食品製造業、食品加工業、食品小売業、外食産業、食品運送業など様々な経路をたどることになる。「食」=「農」+「食品産業」である。

しかも、農の占める比重は小さい。農家は作物を生産するとそれで任務を終え、その後の利益を生み出す過程に関与していない。農家が、生産から消費に至るまでの過程をバリューチェーンと意識し、積極的に利益を獲得するべく打って出ることが必要だ。

そこで、本書は生産から消費に至る全課程を総合的に取り上げている。しかも、全過程を「新フードシステム」としてマネジメントできるはずだし、行うべきとしている。そうすることが、農家と消費者を直接結びつける新システムを生み出し、流通過程で吸い取られている利益を双方が分配であることになる。

この農家あるいは消費者、その双方がフードシステムをマネジメントすることは大きな改革をもたらす。
① 消費者が食の生産現場と直接結びつくことによって、自然の恵みを感じ取ることが出来る。それは人間も自然の一部であるという当たり前の事実がよみがえり、より良好な環境が実現していくことになる。
② 生産者は消費者に対して、農産物、安全・安心、「農」の文化を提供する。それにより、我が国の伝統的な意識が持続的に承継される。また、農家の誇りもよみがえらせることができる。
③ 生産者と消費者が直接結びつくことによって、新たな関係が構築され、創造性が発揮されることになる。

農業は事業ではあるが、一方で公共性を持ち合わせている。この公共性とは我が国の安全保障戦略などと言う小さい話ではない。人と生産、人と自然、持続社会と言った、日本人の生き方そのものにかかわる点で公共性を持ち合わせている。