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№393 リレーションバンキングの理想

№393 リレーションバンキングの理想
(中小企業金融関係)

 平成15年3月27日の金融審議会、金融分科会、第二部会での提出資料を改めて読んでみた。
 これは「リレーションシップバンキングの機能強化に向けて」という題名の資料で、我が国のリレーションバンキング政策の方向性を示したものだ。

http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/singi/f-20030327-1.pdf

 できがいいというか、官僚の作成した文書というのはそつがないとつくづく感心してしまう。こうした文書の特徴は不確かな推測部分が省略されてしまうため、実態に沿って切り込んだ部分が見えない点にある。たとえば、融資に貸し手である銀行と、借り手である企業との間での駆け引きがあるのだが、そこでの人の悪さは行間に隠れてなかなか見えてこない。

 ともかく、このレポートではリレーションバンキングを「金融機関が顧客との間で親密な関係を長く維持することにより顧客に関する情報を蓄積し、この情報を基に貸出等の金融サービスの提供を行うことで展開するビジネスモデルを指すのが一般的である。」としている。

 企業家は企業のガバナンスを徹底して、原則通りのビジネスを行う。金融機関は貸し付け基準など企業に対する評価を明確にして対応する。相互に問題点があれば指摘し、お互いに情報を共有していく。これが、リレーションバンキングの信頼関係の基本形だ。

 さらに、リレーションバンキングでは金融機関の仲介による企業同士の連携、地域への貢献も期待されている。
 当時と、今とでは経済事情は大きく異なるが、金融のあり方を示すものとしては正しいし、今でも通用すると思う。

 現在、金融円滑化法が通過しているが、リレーションバンキングの不況時版として非常に重要な意味を持つと思う。

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 レポートには次のような部分もある。長いが引用する。

「例えば、地方懇談会や財務行政モニター等に対するヒアリングにおいても、エンドユーザーの中小企業者から、中小・地域金融機関に対して、円滑な資金供給とともに、預貸業務を通じて得られる情報を活用したコンサルティング機能や顧客同士のビジネスをつなぐビジネス・マッチングのためのコーディネーターとしての機能の発揮を期待しており、こうしたサービスの提供に対する対価の負担は必ずしもいとわない、との意見が述べられていた。こうした意見は、中小・地域金融機関がリレーションシップから得られる情報を活用しつつ、顧客が抱える経営上の問題に対する解決策をアドバイスする、といういわゆる問題解決型のビジネスモデルへ踏み出していく必要性を示唆するものと考えられる。」