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№392 報道と風評損害

№392 報道と風評損害
 平成11年2月1日に,ニュースステーションが「所沢ダイオキシン 農作物は安全か?」という報道を行った。当時はゴミ焼却場などからのダイオキシン類汚染が全国的に問題になっていた。

 特に,所沢は都心に近く,東京都の廃棄物が運ばれて多く燃やされていたことから,所沢農作物のダイオキシン類汚染が心配されていたのである。所沢市農協は野菜類に対するダイオキシン類汚染の調査を行っていたが,その結果を公表しなかった。

 ニュースステーションは株式会社環境総合研究所の煎茶に対する汚染結果を,「葉っぱ物」に対する汚染とし,あたかもほうれん草を含む,野菜類全体にダイオキシン類汚染があったかのように報道したのである。

 判決文によると,この報道の翌日以降,所沢産の野菜について,取引停止があいつぎ,取引量,取引価格が下落した。
 これについて,農民が朝日放送などを被告として損害賠償請求を行った。

 1審,2審は農民が敗訴した。しかし,最高裁判例タイムズ1140号58頁)はこれを差し戻した。この事件は差し戻し審で和解した。

 同様の問題は貝割れ大根事件がある。貝割れ大根O-157による食中毒の原因物質ではないかと疑われると政府が公表したところ,貝割れ大根の売り上げが激減した事例だ。これについて,判決は公表に違法性はないとした(判例時報1762号6頁)。

 判決は情報の真実性の程度,公表方法の妥当性が問題となった。
 報道によって商品に風評被害が生じる。問題が起こったときにそれを公表するかどうかは大きな問題だ。私はリスクがあっても公表することを選ぶ。