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№383 空想的社会主義者 ロバート・オーウェン

№383 空想的社会主義者 ロバート・オーウェン
 ロバート・オーウェン(Robert Owen,1771年5月14日 - 1858年11月17日)と言えば、
1800年に紡績工場を経営して成功,労働者の生活改善に努力した。1825年にはアメリカでニューハーモニー村(理想的共同社会)を建設したが失敗した。工場法の制定や,労働組合・協同組合の育成にも努力した。」

 空想的社会主義者(Utopian Socialism)ということで、マルクスエンゲルスにいろいろ批判された人だ。もっとも、彼らはロバート・オーウェンの業績は高く評価していたと思われる。「空想的」というのは日本語訳に問題があるかもしれない。

 ロバート・オーウェンはイギリス、ウェールズで生まれ、10歳でロンドンに行き、徒弟修行に入り、服地屋の小僧として働き始める。最初は高級服地店で働き、次には低所得者層向きの服地店で働いた。その後、彼は紡績工場で成功した後に、労働者の権利充実のために活動した。

 彼が活躍した当時のイギリスは産業革命の真っ最中だ。女性や子供が劣悪な環境の下に奴隷のように働いていた。その様子を見た、ロバート・オーウェンは生涯を労働者の生活向上のために捧げていく。

 彼はニューラナーク工場で成功をおさめた。労働者の環境を変えることが必要であるとし、工場労働時間規制法を提唱した。さらに、幼児教育のための施設も作り上げた。ニューラナーク工場の労働条件は改善され、そのための労働の効率、生産性も向上していった。
 ニューラナークは美しい村として残されており、今では世界遺産にもなっている。

http://www.newlanark.org/japanese/

 マルクス主義オーウェン主義のことを「空想的」と言った。労資の階級的対立を社会主義の本質と捉えたマルクスは、この対立を見落としている点で、空想的と評価したらしい。確かに歴史の本質に切り込もうとするマルクス主義者からみれば、ダイナミズムに欠けるだけ、物足りないのかもしれない。

 オーウェンはともかくも企業家として成功しているのだからそれなりにリアリストだったと思う。一方で、労働者の権利改善に向けたひたむきな努力は尊敬に値する。こうした理想をもって、邁進するのもまた企業家の特質ではないかと思う。いくつかの挫折もあったかもしれないが、理想に向かってチャレンジする姿は企業家そのものではないだろうか。

 私は、眼の前にある労働者の悲惨を具体的に解決する姿勢こそ、重視されるべきであるように思う。歴史はそうした地道な積み重ねの結果として動くものであるし、そのような努力を原則としないと、多くの悲劇が生まれるように思う。