№358 グローバリゼーションと中小企業
去年の夏まで景気は良かった。グローバリゼーションは進展し、中小企業もその恩恵を受けてきた。ところが、リーマンショック以来の世界経済の退潮に巻き込まれ、国内需要の貧弱さが強調されるようになった。
グローバリゼーションというのはいったい何なのだろう。中小企業にとっていったいどんな意味があるだろうか。
グローバリゼーションというとき、WTOをどのように理解するかが鍵となる。戦後世界はGATT(関税および貿易に関する一般協定)のもと自由貿易体制を作り上げてきた。GATTはWTOの発展的に解消してきた。GATTとWTOとの違いは何だろうか。
一つは「機関」を持っていることだ。自由貿易体制を国際的に推進する機関がある。もう一つは資本の自由を含んでいる点だ。今日の自由貿易の意味は、国境を越えて投資可能とすることにある。それは日本とベトナムで部品を作り、中国で組み立てて米国に売るという、国際分業を可能とするシステムを作ることを意味する。
WTOはうまく行っていないけれども、投資の自由を含んだ自由貿易の推進は歴史的流れになっている。かつては米国中心のグローバリゼーションであったが、最近は中国など多極化の傾向にある。
こうした、グローバリゼーションの中、中小企業はどのように生き残るのだろうか。グローバリゼーションの中で大企業は海外進出を果たす。海外の安い労働力を利用し、海外の中小企業を利用して製品を作る。安かろう、よかろうとう考えが中小企業を圧迫する。
しかし、驚いた報告がある。グローバリゼーションの進展の中で、中小企業の産業界での地位の低下はないというのだ。中小企業と言ってもさまざまで、グローバリゼーションに適応できず滅ぶ企業もあれば、その中でニッチを獲得する企業もある。海外に進出しなくとも、国内生産の質を変革することによって生き残り、発展するという。問題なのは中小企業ではなく、海外進出できなかった大企業だというのだ。
本当かとも思うが、どうも真実らしい。