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№337 契約締結上の過失

№337 契約締結上の過失
 ブログを見ていただいた人からの相談で、契約締結前の過失が問題になる事例があった。
 家屋の解体を頼まれたのだが、いざ、とりかかろうとしたら別の業者に頼んでしまった。損害賠償請求できるかという相談だ。

 まず、問題になるが果たして契約が成立していたのだろうかということだ。日本の慣行として、契約書は作らない。見積もりができて、OKが出ればそれが契約だ。その場合は、請負工事によって得られるであろう利益が損害になる。
 もっとも、業者としては原価を明らかにしなければならないから、これはかなり勇気がいる。

 では、契約がなかったらどうだろうか。
 この場合は何の義務もないのが原則だ。

 でも、たとえば、解体のユンボを手配していた、そのために下請代金を払わなければならないはめになったというのであれば、その分ぐらいはよこせと言いたくなる。

 確かに、発注者側がそのことを認識していれば、お互い準備が進んでいることを知っているわけだから、一方的にキャンセルするのであれば、知っている分については賠償せよというのが契約締結上の過失という議論だ。

 つまり、契約前であってもお互いに信義を守って、相手のことを信頼して行動している場合があるから、そのような場合には契約上ではないが、「信義則」上の過失があると考えるのである。

 土地売買でよくある例が、売り渡しの証明を出した後に、やっぱり売らないと言ってきた場合がある。不動産業者などは「おいしい仕事」逃したとあって、悔しい。そこで、売り渡しの同意を理由に賠償請求を求めることがある。これは、原則としてできない。何か契約上の過失を問える特別事情が必要だ。