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№318 土壌汚染と時効の壁

№318 土壌汚染と時効の壁
 前にも述べたが、最近は土壌汚染事件が増えている。
 土壌汚染事件の大きな問題に時効、除斥期間と行ったハードルがあることだ。

 せっかく購入した宅地に廃棄物があった場合、不同沈下の原因になったり、メタンガスや亜硫酸ガスなどの排出があったりする。地下に廃棄物があった場合にはそのことだけでも地価が下落するだろう。損害は深刻だ。

 最近の問題は、地価に廃棄物が埋められたのが古いことが多いことだ。たとえば、20年たって問題が発覚した場合はどうだろうか。

債務不履行責任】
 売買契約には瑕疵担責任というのがあって、土地について隠れた瑕疵がある場合には無過失責任を追及できる。隠れた瑕疵というのは、買ったときにはよく分からない欠陥を言う。この場合、分かったときから1年内に請求しなければ責任追及できない。請求はどんな方法でも良い。

 さらに、瑕疵担保責任では売買契約に伴う時効という問題がある。最高裁判例によると、引き渡しを受けたときから消滅時効は進行する。すると、10年たつと追求できなくなる。造成が10年以上前だと追求できなくなってしまう。

不法行為責任】
 もう一つは、不法行為責任というのがある。良好な宅地だと思っていても、実は欠陥商品だった。売買の時にきちっとしてくれればこんなものは買わなかったということであれば、不法行為責任の追及があり得る。

 この場合は、加害行為、損害が生じてから3年で時効消滅する。ところが、土壌汚染による地盤沈下など原因追及にけっこうてまどり、いろいろ調査したり、交渉したりしているとあっという間に3年ぐらいたってしまう。
 
 さらに、除斥期間という壁がある。つまり、不法行為が行われてから20年以上たつと、もはや請求できなくなってしまう。除斥期間というのはわかりにくい言葉だが、時効のようなものと考えればよい。

 これらのことはどう考えても不合理だ。土地の状態というのはなかなか分からない。わかり初めて調査に膨大な費用と時間がかかる。時効や除斥期間を安易に認めることは、最後にババを引いた者、つまり、庶民に責任を押しつけることになる。