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№317 書評 小説家の経営術

№317 書評 小説家の経営術
どんきほーてさんのブログで紹介された本を読んでみた。

http://blogs.yahoo.co.jp/soho21k_matu/62111686.html

 著者は51歳で技術系人材派遣会社、ジャパニアス株式会社を創業し、10年で従業員1000人にするという目標を掲げた。HPを見ると、2000年創業時には売上高5300万円、6人の社員だったのが、2008年には売上高272億円、社員542人に成長していいる。

http://www.jna.co.jp/

 最近、私は企業のHPよく見るので、HPを見ると何となく企業の「人」となりが分かるような気がしている。HPがさえないからダメだということにはならないが、HPの質が高いとたぶんいい企業なんだろうなという気がする。

 質の高いHPは、企業の実態、社員の実態、特にその企業が何を大切にしているかがよく見えてくる。ジャパニアスのHPは社員の顔が何となく見えてくるし、社長の経営理念のいささかくどさを感じるものの、よく見える。几帳面な企業はやはり違う。

 さて、この書評だが、かつて小説家を志した著者は人生を創作の場としてとらえようとしている。小説の創作するのと人生を創作するのと重ね合わせ、小説内の人々が生き生きと描かれるように、自分の人生にかかわった全てが生き生きと描かれるように人生を作ろうとしている。

 著者の最もくみ取るべきところは、やはり「人」の見方ということだろう。人がいたからこそ事業を創業できる、人がいたからこそ事業を展開できる、人がいたからこそストーリーを組み立てることができる、著者の人生には常に「人」がある。社員が会社で働き続ける判断基準は「自分にとってこの会社で働くことが幸せなのかどうか」という点だという。「一人の人間としてどんな人生を歩んでいけるか」ということを常に自問しているという。

 ほかにも勉強になる点があった。それは小説には優れた構成力が必要だという点だ。「あらかじめストーリー全体を鳥瞰するような作家的な視点は、経営者にとって欠かせないものだと考えています。」という。冷静さや、論理的な能力、詰めの緻密さなど、気持ちだけでは小説家になれないように、気持ちだけでは事業者になれないということだ。

 企業は何をすべきか(to do)というより、どのようにあるべき(to be)か、ということを重視している。ハムレットばりの悩みだがおもしろい見方だと思う。企業全体のあり方を全身で感じ取るという総合性、全体性の認識はいろいろな道に通じる。