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№314 病院の譲渡

№314 病院の譲渡
 中小の病院は院長の馬力で大きくなったところがほとんどだ。
 入院施設を持っている程度の病院では院長、あるいは奥さんが一生懸命がんばってきて大きくしていった歴史を持っている。

 患者さんを大切にしたり、看護婦さんの労働条件を考えたり、勤務医の確保に走ったり、この人たちはいつ寝ているのだろうと思ってしまう。個人の小さな「医院」から始まり、大病院に成長するのは端から見ていると、医者というのは儲かるなどと考えるが、やはり相応の苦労をしている。

 院長が50代となり、60代となってくると、大きくなった病院をどうするかが問題になる。医療法人は医療法に基づいて設立される公益法人であるため、単純に譲渡とすることはできない。公の許認可というのは財産権にはなることはないというのが行政法分野の原則になっている。もっとも、このあたりの法律上のハードルはたいした問題ではない。

 むしろ、院長が奮闘してきて大きくなった過程で積み残してきたことをどのように解決するかが問題だ。
 院長が30代、40代と馬力があって、大きくした病院は老朽化が進み、立て替えをしなければならない。病院全体の人の配置も高齢化が進み世代交代が必要だ。病院によっては多額の長期債務が残っている場合もあるだろう。

 院長は年をとり、こうした問題を残したまま病院を次の経営者に引きつがなければならない。ある病院経営者は「息子ではできないだろう。それよりも、病院を売った方が子供たちのためになると思う。」などと言う。それは、院長の馬力でできあがってきた歴史を見れば、その気持ちはよく分かる。ここのところは中小企業の親父と同じだ。

 さて、病院譲渡となると、今度は、病院の値段をどのように決めるか、敷地や建物の処理をどうするか、税金対策もある。しかし、実際にはコンサルがかなり発達していて、かなり手際よくやってくれる。しかし、このコンサルはある種の慣れでやっているところがあり、相続人が文句を言ってきたり、何か法律上のハードルが起こると、驚くほどもろい。