№301 日本経団連の主張
ここ最近、温暖化と経済策に関心が向いている。日本経団連の対応があまりにひどいのでどうしても、経団連批判に頭が向く。日本経済同友会はそれなりにいいところもあると思うのですけどね。
日本経団連は2009年5月12日に「ポスト京都議定書におけるわが国の中期目標に関する意見」を発表した。そこには経団連の主張がよく凝縮されている。
日本経団連の考え方の基本は「限界削減費用の公平化」である。限界削減費用は企業にかけられる温暖化ガス削減コストの限界値ということになる。経団連の主張する限界削減費用がどのような意味かよくわからないが、特定の産業で平均化された限界削減費用ということだろうか。ともかく、産業ごとに限界削減費用を割り出し、それを基準に温暖化政策を考えるべきであるというのである。
経団連は、限界削減費用を超えるような、厳しい規制はやめてくれというのである。それを超えた規制を加えることになるといろいろ問題が起こるというのである。
① 企業がつぶれてしまって、失業なども増える。
② 企業が海外に流出して、海外で温暖化ガスを出すだろう。
③ 生産コストが上昇し、国民の負担が増える。
④ 生産コストの上昇は国際挙総力の低下を招く。
⑤ ①から④と同じだが、社会全体のコストが上昇して不況を招く。
もう一つは、規制は公平性を大事にしてくれと言う。
① 欧米の企業の限界削減費用が超えるような不公平の計画をやめてくれ。
② 特にBRICs諸国に削減を義務づけていないのに、日本ばかりが義務づけられるのは不公平だというのである。
経団連の考えにはいろいろ問題がある。そもそも限界削減費用は根拠が不十分だという点だ。鉄鋼などの産業部門での生産コストや、削減コストの実態は公開されていない。一つの会社であっても事業所ごとにコストがことなる。温暖ガス削減費用を統計的に処理できる資料はわが国では入手できない。それなのどうして限界削減費用を明らかにできたのであろう。誰も検証できない数字を並べても信用できない。
産業ごとに、温暖ガス削減コスト考えていくというのはそもそも非常に難しい作業で、EUでも大変苦労している。それは情報がないからだし、情報を得ても技術も違う内容を比較しようがないたからだ。日本のように情報が十分集められてもいなければ、ほとんど開示されていない状況で、これを考えることは不可能じゃないかとも思う。
このほかにも、経団連の発想は、日本の温暖化技術が全く発展しないと考えていたり、温室効果ガス削減によってエネルギーコストが下がることを無視していたり、温暖化対策によって起こる新しい産業を無視していたりして、きわめて作為的だ。