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№299 排出枠取引

№279 排出枠取引
 排出枠取引は、大口排出源(電力、鉄鋼、セメントなどエネルギー・産業部門)について、CO2などの温暖化ガスの排出量抑制しようという政策だ。日本の温暖ガスの50%がずか100社程度の企業から排出されている。私たちがエコバッグで一生懸命努力しても、この企業群が努力しなければ何にもならない。彼らの排出量はそれほど大きい。

① 日本全体の削減目標を取り決める。
② 削減目標に沿って、企業群全体のCO2などの排出総量を取り決める。
③ 各企業ごとに排出枠を割り当てる。企業は排出量を超えて温暖化ガスを排出してはならない。
④ 企業は割り当て分より、少ない量ですめば、枠が余るのだが、余った分を市場を通じて売却できる。
⑤ 企業が割り当て分より、多くの量を発生すれば、余った分を市場と通じて購入しなければならない。

 企業としては、CO2排出量を小さくすれば利益が上がるし、大きくなれば損をしてしまうので努力する甲斐がある。特に、CO2排出量が小さくなることで、一方で大きな企業との関係で競争上の優位な立場に立つので、ライバルに勝ちたいという資本主義社会の性(さが)によりがんばる気になる。

 経済学的には、この手法により社会全体が最も効率よく実現できるとされている。

 それだけなく、CO2の排出量の削減は、企業のエネルギー効率の向上を招くので、経費削減になる。それだけではなく、エネルギー効率の高い技術よってそれまでできない新しい事業が展開できる。高いエネルギー効率技術そのものが商売になるかもしれない。

 地球全体のCO2などの処理能力は有限だ。この能力は有限な資源とも言える。この有限な資源の中で、企業が共存し、企業として発展していくためには、総排出量の制限は避けられない。

 中小企業はここのところの世界の流れを読まなければならない。日本経団連を知る人に聞けば、本音のところでは排出枠取引は時代の流れであると考えている。トヨタなど自動車産業、家電メーカーなど世界市場を相手にしている企業は問題の本質をよく理解している。中小企業は、こうした企業の新しいニーズに呼応して技術を売り込むことが必要だ。