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№277 セブンイレブン報告請求事件

№277 セブンイレブン報告請求事件
 セブンイレブンについてはいくつか裁判が起こっている。本件は最近,最高裁セブンイレブンが敗訴した事例だ。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080704150518.pdf 

 セブンイレブン加盟店はセブンイレブンを通じて商品を仕入れている。契約上どうも仕入先を推薦しているだけで,強制はしていないようだ。しかし,本社と加盟店との力関係からすれば推薦か,強制かは言葉の遊びにしか聞こえない。

 この仕入れについての計算はオープンアカウントと言われる帳簿方式で処理されている。判決書はなにやら複雑なことが記載されているが,本社と加盟店との金銭のやりとりは仕入れだけでなく,ロイヤリティの支払いなど全て一つの帳簿で処理されるということらしい。

 仕入代金はとりあえず,本社が支払い,本社がその後に加盟店に請求する。商品の納入は本社経由で行われるし,代金の決済も本社経由で行われる。しかし,契約は推薦業者と加盟店との直接の売買契約で,本社は加盟店の委託を受けて仕入業務を代行しているに過ぎない。

 加盟店としては「支払先,支払日,支払金額,商品名とその単価・個数,値引きの有無等,具体的な支払内容」について報告を求めたいのが人情だろう。セブンイレブンが中抜きをしているかも知れないではないか。不当に高い商品を買わされているかも知れないではないか。自分が,仕入れているのに,どれだけの商品をどれだけの価格で仕入れたのか分からないというのは不合理なことだろう。

 ということで,どうも,この裁判は取引資料の提示を加盟店が本社に求めた訴訟らしい。原審判決を読んでいないので詳しくは分からないが,地裁,高裁は加盟店が敗訴した。契約書に報告義務の記載がないというのが理由らしい。高裁の裁判官は社会常識に反している。

 ところが,最高裁セブンイレブンに報告義務があるとした。それは,委任を受けて仕入れ事務を引き受けているのだから,受任者として報告義務があるというのである。至極もっともな判決で,何でこんな事件が最高裁まで行かなければならないのだろうと思う。民法656条,645条は委任について報告義務を定めているのだから,民法に従ってセブンイレブンは報告義務があるというのだ。

 誠に常識的な判決で,原審裁判所が裁判官は何を考えていたかと思う。
 ここにも,セブンイレブンの秘密主義,加盟店を商売のかやの外に置く,生かさず殺さず政策の現れが出ているのではないかと思う。