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№276 汚いぞ。セブン・イレブン。

№276 汚いぞ。セブン・イレブン。
 2009年6月22日,公正取引委員会は,株式会社セブン-イレブン・ジャパンに対して独占禁止法違反に基づいて排除措置命令を発した。

http://ke.kabupro.jp/tsp/20090622/140120090622028018.pdf

 独占禁止法19条は「事業者は,不公正な取引方法を用いてはならない。」と定めている。
不公正な取引にははいろいろあるが,その一つに優越的地位の濫用(らんよう)禁止というのがある。これは「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に」制約することを禁じているものだ。

 この条文は中小企業にとっては非常に重要な法律だ。大企業と中小企業は法律上は対等平等ではあるが,実際には大きな力関係の差がある。この条文は対等な関係を実現して,自由な競争を保障しようというものだ。セブン・イレブンとその小売店とでは誰がみてもアリと巨象だ。命令書によると,セブン・イレブンの平成19年3月から1年間の売上額は約2兆5700億円であるから,その差の大きさはアリと恐竜ぐらいの違いかもしれない。

 加盟店はフランチャイズ契約に細かく縛られている。加盟を打ち切られれば直ちに店舗を返還しなければならない場合もある。契約終了後1年間は他のフランチャイズに加盟できない。契約を打ち切られれば,他に生きる道を探さなければならない。加盟店は個人の小さな事業者だから,そんな簡単に他の事業ができるわけがない。

 今回,問題になった事例は見切り販売の禁止だ。公取の調査では売れ残り食品など1店舗あたり年間530万円の食品などが廃棄されている。それが全て加盟店の負担になっている。おまけに,この530万円に対してはロイヤリティーと称する支払いが生じるのだから加盟店としてはたまったものではない。

 本来,見切り販売の禁止はフランチャイズ全体の利益を擁護するためのものであるから,セブン・イレブンにおいてもそのリスクを負担するべきである。しかも,見切りを禁止して加盟店の裁量を奪っておきながら,この売れ残りに対するリスクを全部加盟店に負担させるのは余りにもひどい。リスク負担だけでなく,ロイヤリティーまで出せというのだから,権力をかさに着た悪代官の悪税取り立てみたいなものだ。

 私は,セブン・イレブンの違法な行為に対して,過去のロイヤリティーについてもさかのぼって損害賠償請求できるのではないかと思う。心ある加盟店は是非とも,あらゆる法的手段を駆使してセブン・イレブンと戦ってもらいたいものだ。

 もっとも,私自身はフランチャイズという方式自体にそもそも疑問を持っている。あのように細かく契約で制限されては企業の自立性はそもそもない。企業である限りはどこかに自立性や,自由裁量というものがあっていいのではないか。他人の信用を利用して商売することは許されるだろう。しかし,自立性をとことん制約するやり方は地域の経済発展や,地域文化の多様性からすれば,長い目で見ればマイナスではないかと考えている。