名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№272 モクモクファームの秘密,自律の思想

№272 モクモクファームの秘密,自律の思想
 モクモクファームは成功している。
 吉田専務のお話によると「自分たちの商品を自分たちで決めることができる」ことが大切だという。大手のスーパーに価格を決められてしまう農業ではだめだということだ。製造業でも価格の決定権は大企業に決められてしまう。

 モクモクファームの前身は「銘柄豚振興会」だ。三重県のブランド豚を作ろうというところから出発した。木酢を利用した良質な肉を持つ豚を開発して「山麓豚」ということでジャスコに売り込んだ。ジャスコとは別にこの豚を売ろうとしたところ,「山麓豚」のブランドが使えないということになった。そこで,「伊賀豚」の銘柄が生まれたのであるが,ブランド一つとっても大手に支配されるようではダメだということになったようだ。

 この自律的であるということは,中小企業同友会でも口をすっぱくして言われていることだ。農産物作りについて明確な思想があること,その思想が社会に対して説得力を持つことで支持を広げていく。この支持を得られることで,大企業には依存しない経営体質を作ることができる。大企業に対しても対等に交渉して価格を決めることができる。

 もちろん,問題は,この「思想」の中身だ。
モクモクファームがなぜ地域ブランドにこだわったのだろうか。
 商社や大手小売業者など食肉の流通ルートは決まっている。そんな中で,自分たちの商品を作り,自分たちの消費者を作り,自分たちの流通ルートを作るという作業は荒波の大洋に小舟をこぎ出すようなものだ。

 しかし,小さくとも自分たちの商圏を作り上げているという「自律」が,こことは小さくともがんばるだけの力があるという消費者の信頼を生んでいるのでは無かろうか。逆に何か質の良いものがあるからそこにあるはずだという,消費者の強い信頼を生むことにもなるのだろう。

 この「自律」を生み出す原動力に「地域」がある。