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№269 事業再生についての悩み

№269 事業再生についての悩み
 ある事業の事件を引き受けている。
 この事業は単体では採算がとれており,年5億円程度の売り上げがあり,経常利益を生み出している。客層も安定している。経営者は同族で支えられており,社員との関係も良好だ。しかし,社長が別の事業に投資をして,それが原因で数億の負債を抱え込むこととなった。

 負債ができると人の頭は狂う。普段の人格からは信じられないことが起こる。この場合,友人からはお金を借りては返し,果てはサラ金からもお金を借りている。妻や,子供の名義でもカードを作り借金をしている。最悪なことに,本体の事業体にも連帯保証させている。本体事業からの収益から,別事業の借金を返済したために,本体事業のキャッシュフローも悪化し,長期負債の返済が滞ってしまった。これが問題だ。

 馬鹿と言えば,馬鹿だが,これを笑うのは借金の怖さを知らない人の話だ。手形でもそうだが,借金は人の頭を狂わせる。積み重なったり,いつもやりくりのために奔走していると,だんだん借金は現実性を失ってくる。やりくりしなければならないという気持ちだけが先行し,その場のつじつまが合えば,とりあえず良し,という気持ちになるのだ。これがモラルハザードだ。社長は現実を見ることを恐れるようになり,会計は限りなくいい加減になっていく。

 さて,この事件なら,今なら本体事業を救える気がする。問題は事業所などの財産が社長個人の名義になっていることだ。社長が破産すれば財産を失う。どこかでスポンサーを確保して事業財産の保全を図らなければならない。本体の事業はまともなのだから,会計を整理し,さらに事業計画を作り上げることになるのだろう。どうしたらスポンサーは見つかるだろうか。メイン銀行にはどのように話したらいいだろうか。悩みは多い。