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№268 文化としての有機農業

№268 文化としての有機農業
 有機農業というと「無農薬」であるとか「減農薬」という農業の手法である思う人が多い。確かにそうなのだが,それだけではない。自然の中で農業を進めるという農業のあり方そのものを変える考え方がある。

 戦後の日本の農業は化学肥料と農薬,土地改良事業によるほ場整備の歴史だったと言ってもいい。農水省の考えでは田んぼは単純な生産の場でしかなく,生き物が息づく場ではなかった。大量の化学肥料と,農薬が使われ,畦はコンクリートとなり,小川は暗渠となった。メダカやドジョウは姿を消し,多くの野生生物が絶滅あるいは絶滅の危機に瀕している。

 農水省は農業をあたかも工場のように整備しようとしてきたのではないかと思う。また,農家は農協に統合され,時の農政に翻弄されてきた。農業と消費者が直接結びつくことはほとんど無かった。

 有機農業はこうした戦後の農政に対するもう一つの農政として発展してきたのである。
 野生生物と共生できる農業は,同時に野生生物と共生して育んできた文化を守る農業でもある。食の安全を守る農業は同時に都市の農山村に対する文化の要求にも応えるものでもある。
 
 もう一つの農政を実現してきた有機農業は農民の自立,農民としての誇りを取り戻す農業である。

中小企業政策は「有機農家」が作り上げてきたものに学ぶ点はないだろうか。生産を大企業に統合化されないもう一つの選択肢はないだろうか。流通を独自に開拓するもう一つの選択肢はないだろうか。中小企業家の生産活動は人々の暮らしと結びつき,文化を創る活動にはならないのだろうか。