名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№174 みなさまありがとうございます。

№174 みなさまありがとうございます。

 いろいろ考えてみました。前号は,相談内容の例示ですが,少し,論点として整理してみました。
 中小企業同友会としては,主体的,自律的な活動ができるという視点や,労使見解など大切にしなければなりません。もう少し,この視点で練る必要がありそうですね。
 M&A,企業分割なども場合によっては不良債権処理みたいなところがありますから,その点も考えなければなりません。

籠橋

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【相談に関する論点】
1. 融資関係
  貸しはがし貸し渋り対策は基本的には独占禁止法銀行法に基づいた,交渉の「見える化」,さらに,公正取引委員会金融庁の指導を活用することになると思われる。
 1) 銀行の優越的地位に基づく濫用事例
   事業が銀行に依存している場合に銀行は独占禁止法上の優越的地位とされることが多い。そのような地位を利用した,担保の追加,金利の引き上げ,融資の中止など,正常な商慣習とは異なる対応をした場合には,公正取引委員会金融庁などの指導を通じて銀行に対応することができる。
 2) 銀行の説明責任を活用した事例
   民事契約の諸原則,銀行法から言って,銀行には顧客に対する説明責任,説明責任を果たす体制構築義務がある。また,銀行の社会的責任(金融庁などは地域の役割についてあり方を示す指針を作っている)に基づいた対応も求められる。
   銀行に融資を強要することはできないが,これらの責任を通じて交渉過程を「見える化」することによって,有利な交渉を引き出すことができる。
2. 信用保証協会
 1) 信用保証協会の仕組みの説明に関連した事例
   信用保証協会は県や市による公的保障制度であるが,その仕組みについてはほとんど知られていない。基本的な仕組みや,中小企業を維持を目的としている信用保証協会法の説明によって対応がかなり異なる。
 2) 信用保証協会説明責任を活用した融資申込時の対応について
   通常,銀行を通じて信用保証協会を利用するため,保証協会との直接のやりとはない。しかし,新規,追加融資を断られた場合の対応は直接保証協会とやりとりすることで効果が上がることがある。但し,直接やりとりする場合,銀行との信頼関係を維持するかどうかについて考慮する必要がある。
 3) 信用保証協会の助言責任を活用した第三者弁済後の対応について
   第三者弁済にいたる事例は,信用力が著しく悪化した事例であると考えなければならない。ほとんど事業者は第三者弁済後の状況がどのようになるか知らない。保証協会は基本的には企業を生かす方向で「助言」する義務があるため,これを活用して協議することになる。
3. セイフティネット,公的援助制度
  これについては,弁護士はほとんど分からない。
  その種類,活用法,利用した場合の信用力の低下の問題など協議するべき問題はある。
4. ノンバンクその他の金融機関
 1) ノンバンクとは原則としてつきあわないということになる。原則は利息制限法を用いた,過払請求,元本減少して分割払いにする交渉がある。
 2) ノンバンクについては多数の契約書を作ることが多い。このときに,必要な説明を行わなかったり,めくら判を押させることがある。こうした契約締結時の問題を提起して難局を切り抜けることがある。
 3) 劣悪な日掛け,ヤミ金などについては,警察その他の法的手段を利用して徹底的に拒絶の対応をすることになる。
5. 破産,民事再生などの法的手続き
 1) 経営破綻した場合には破産,民事再生などの法的手段しかない。経営者は万一の時に備えてそれについての知識を持っておかないと,社員の生活,家族の生活についてイメージができなくなり,生活を維持できなくなる。
 2) 事業譲渡と事業再生。経営破綻した会社を整理する一方で,社員,家族の生活を守るために事業譲渡の手法がある。
 3) 経営破綻した場合の保証人への対応,抵当権の実行に対する対応がある。
6. 取引関係に関する対応について
 1) 継続的に取引関係があって,立場に差がある場合には,独占禁止法,下請代金法の活用が考えられる。突然の単価,数量の引き下げ,検認と称して納期を送らせるなど正常な取引慣習とは異なる無理難題を迫られることがある。これについては独占禁止法,下請代金法などの活用が考えられる。
 2) 取引関係の一方が破綻した場合には,直ちに債権回収を行わなければならない。納入した商品の回収,債権の差押え,担保の実行と限られた範囲であるが,相手にお金が残っている間に行わなければならないことは多い。
7. 雇用問題
  雇用問題は「労使見解」に沿って解決さればならず,最も同友会らしさが発揮されるべき課題である。
 1) 派遣労働についての法律問題は何か。
 2) 就業規則の変更、賃金の引き下げ、出向など、企業を維持して難局を乗り切るためには労働条件の変更を検討せざる得ない場合がある。その際に労働者の人権を守りながら経営を維持するためには法はどのような手続きを用意しているか。
 3) 解雇について
   解雇は手をつけてはいけない禁断の果実であるが、やむ得ない場合もある。法は社員を解雇する場合にはどのような手続きを要求しているか。
 4) 外国人労働者の取り扱いについて