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№166 リレーションバンキング

中小企業法務 №166 リレーションバンキング
 ここ数日,金融機関の自己資本率の問題に関心が向いている。

 従来のBIS規定では資本の評価について信用リスクのみを考慮していたが,新BIS規定では市場リスク,オペレーショナルリクスも加わっている。リスク評価がきめ細かになった。リスクといった何らかの予測はあまり細かくすると,かえって不正確になる。見かけ上の緻密さは逆に実態との齟齬を隠していまう危険を伴う。

 平成15年金融庁はリレーションバンキングという考えを提唱し,地域密着型金融政策を進めてきた。これは極端に言えば担保だけで融資許容量を考えるのではなく,企業の持続性を考慮した融資とうことになろう。地域金融機関とその融資先企業との長期的継続的な取引関係の中で、融資先中小企業の事業内容や成長性・技術力、経営者の資質などについて情報を得ることで適切な信用リスクの評価を行い、融資を実行するという取り組みである。

 インターネットで調べてみると,信用金庫など地域密着型金融機関ではこのリレーションバンキングをかなり重視しているように見受けられる。企業にとっても,銀行にとってもウィン・ウィンの関係になるということだろう。経済産業省産業クラスターの育成を考えているが,地域全体が相互に密接関連して,地域の経済力アップするというのはある意味では正しい。このリレーションバンキング政策はこの経済産業省の政策とも連動したものだ。

 問題は,リレーションバンキングは実際にどの程度威力を発揮しているか,という点である。今日のように先の見えない不況下にあって,銀行は信用リスクをどのように評価するのだろうか。リレーションバンキングの思考は機能しているのだろうか。昨今ではリスクのマイナス評価はいくらでもできる。細かく積み上げれば,緻密で立派なリスク評価ができるだろう。しかし,それは現実的ではないことも少なくないのである。

 また,不況下にあってプラスの評価を正確に行うという作業を銀行はどのようにしているのだろうか。ブログ友達のオトッピーさん( http://blogs.yahoo.co.jp/otoppy2008bs )の事業経過では,銀行のこうした,正確で正しい作業は見えてこない。