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№141 「倒産」しても生き残る? その1

中小企業法務 №141 「倒産」しても生き残る? その1

 「倒産」というのはそれで全てが終わりだと思われがちだ。キャッシュが間に合わず資金が枯渇すれば企業生命は断たれてしまうことが多い。

 しかし,一定の年商があり,社員の士気も維持できるような場合には最悪の事態にあっても事業を再生させるチャンスはある。その手段の一つが事業譲渡の手法だ。つまり,借金さえなければ事業が健全に維持されると考えられる場合に,事業自体を譲渡する方法が考えられるのだ。

 事業譲渡というのは,会社の事業そのものを第三者に売却する方式を言う。それが,特定部門であったり,会社の事業全部であったりする。この事業譲渡がうまくいけば,残された会社の債権者にとっては,破産財団の金額増えて,配当が大きくなるし,社員にしてみれば雇用が確保される。顧客にとっても,取引が維持されるメリットがある。

 この事業譲渡は一方で,借金だけ旧会社に残して逃げてしまうと言う問題点もある。そのためある種の公正さは必要なことだ。その最もオープンな手続きが,破産であったり,民事再生手続きであったりする。

 ところで,事業譲渡はスピードが命だ。事業は継続してこそ生命が保たれる。一旦中断してしまえば顧客は他の業者に乗り換えてしまい新たな秩序ができあがってしまう。その点では破産手続きは時間がかかって向いていないだろう。むしろ,事業者の経営権が社長に残っている民事再生は向いている。民事再生法は早期に事業譲渡が可能なように制度を整備している。

 その譲渡先は親族の会社であったり,社員同士で新たな事業を結成して事業を譲り受けるなど様々ある。