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№119 中小企業アジア共同体?

中小企業法務 №119 中小企業アジア共同体?

 中小企業家同友会にはアジアとの関係を研究するグループがある。

 WTO発足以来,世界の経済は大きな変容を遂げている。国境を越えて資本進出を実現しようと言う動きは急速に進み,WTOはその象徴的できごと言えるのだろう。

 WTOはいわば国境という国内経済社会の保護の枠組を取り払ったり弱めたりするものと言ってよい。WTOの実質は資本投下の自由であり,多国籍企業の競争力を強化にある。WTOがめざそうそする体制下では法的にも企業が国家よりも力が強くなる場面だってあり得る。例えば,北米自由貿易協定(NAFTA)では協定違反を理由に企業が国家を訴えて賠償金を得るという事態もある。このような事態を知って,各国はそう簡単に「国境」という防波堤を崩すことはないだろう。

 そうは言っても,自由貿易の恩恵は一方で存在する。中国,インド,ブラジルなどは優等生になっている。ベトナムの経済発展も著しい。環境は破壊されているが物は豊かになっている。WTOはおそらく抗しようもない時代の流れということだろう。国家主権の威信をかけてWTOのざまざまラウンドで百家争鳴の論議がある。一見進まない状況があるように見えても,数カ国条約の進展によって自由貿易の範囲は拡大している。

 EUは統一体としての機能を高めているし,アメリカも「米州」ということで南北の貿易圏の拡大を図っている。アフリカもEUにならった連合を志向しているし,アジアも同様である。これは本当に奇妙なことだ。第二次世界大戦は各国のブロック経済が災いして勃発した。それがだめだということで,国連やGATTなどもできたはずだ。しかし,いつのまにか,貿易協定という形でブロックができている。

 もちろん,WTOの流れは後戻りはない。世界単一市場への流れの中の現象であるから,かつてのブロック経済とは全く異なる。中小企業はこのような世界単一市場への流れに組み込まれており,世界の企業との連携無くして企業の持続や繁栄を語ることはできない時代となっているのである。