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№2444 内示書の役割

 内示に従って製品を作り上げることがありますが、途中で内示と取り消されると大きな損失を被ることがあります。特注品で他に転用が効かない場合は準備行為にかかった費用をなんとかしなければなりません。これに対する対応はどうしたらよいでしょうか。

 

内示どおり契約されなくても責任を問えないのが原則です

 契約締結前に内示をもらうということも少なくない。製造業の場合、毎月の数量を予測しなければならないため、内示、時には内内示というような発注予定数量を指示されることが多い。こうした内示はあくまで発注の予定に過ぎないので、それに反した場合に必ずしも何か責任が問えるわけではない。昨今のように半導体不足というような予見できない事態が起こると内示に反してもやむを得ないということになる。

 

内示に責任と持たせたい場合もあります

 しかし、単品が非常に高額な機械の場合は内示に一定の法的な意味を持たせる必要がある。例えば、一台数千万円もするような機械の発注を受ける場合、まず内示をもらって準備が始まり、ある時期に正式に契約締結、受注となる。納期については内示段階で決まっていることがあり、このような場合には契約締結前から準備に入らなければならないこともある。

 

内示に反して契約締結しない場合の準備行為という損失が生じます

 契約準備段階で材料を集め、機械の組み立てに入り、そこそこ進んだ段階で契約締結しないとなると受注側は大きな損失を被ることになる。こうした特注機械は買主の利用に合わせて作成されるため、集めた材料、組み立てられた機械など転用することができない。こうした場合の被害について、リスク回避のための法的対応をしっかりしておく必要がある。

 

内示違反に責任を持たせる法的工夫

 「契約しない」という場合、契約は存在しないので債務不利履行責任を問うことはできない。契約責任も原則問えない。対策を立てなければ泣き寝入りということもありえる。この場合、私たちは「契約締結上の過失」という考え方で責任を追求することになる。つまり、内示をもらった段階で、発注者・受注者は特別な信頼関係に入ったことになる。受注側は発注者を信頼して準備行為に入っているのだから、それを途中でやめるというのは信頼を裏切ることになる。この信頼に対する裏切り行為を法律の世界では信義則違反とよんで、賠償責任を認めている。

 

具体的にはこんな工夫が必要です

 この場合、発注者がどのような準備行為に入ったかをよく理解している必要がある。つまり、内示書に「納期遵守のため、次のような準備に入ります」と記載するとか、メールなどでこうした準備行為に入るけれど契約は大丈夫かといったやりとりとかいった具合だ。つまり、相手に対する信頼を基礎に準備に入った行為であるということがわかるようにしておく必要がある。