ブランド商品を販売する場合,登録商標や特許など知財関係をしっかりしておくことは当然のことだ。自社では販売力がないため,他者の販売網などを頼る場合には知財関係ばかりでなく,ある種の取引の確実性や,契約終了後も当該商品や類似商品を販売させない仕組みを作っておく必要がある。
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販売網を他者に依存する場合の契約
強いブランド力があるが,販売力がない場合,あるいは海外との交渉で特定ブランドの販売権を獲得したが販売網がない場合には最低購入量と競業避止義務とを契約上定めておく必要がある。
最低購入量など
たとえば最低購入量の定めは次のようになる。①の条項は普通に思いつくが,②の条項を入れておかないと契約違反の時に,賠償額が決まらず,直ちに賠償請求できない可能性がある(東京地裁H25.12.4判決(判時2245号52頁)参照)。
① 本件独占うr商品の代金の支払方法,最低購入量,その他の取引条件は,次のとおり とする。
(ア) 甲が海外へ代金を支払い輸入した商品を,乙は,甲へ,後記●に定めた価格表を
基に算出し,その代金を支払うものとする。
(イ) 年間総量を72万本とし,各半期毎に次の数量を被告が甲から購入するものとす る。ただし,この数量は全て「香水」レギュラーボトル(50mlまたは100ml)とする。
② 被告は,上記(イ)に定めた最低購入量を原告から購入しない場合には,その購入しなかった最低購入数量相当額を損害賠償として,原告に支払わなければならない。
競業避止義務
契約終了後であっても,ブランド品あるいは類似の商品を販売されることを最低限防がなければならない。そこで,次のような条項を入れる。
乙は,本件基本契約終了後,本件独占商品の輸入,販売等,甲の事業に支障をきたす一切の行為をしてはならない。ただし,本件基本契約終了時点で保有する本件独占商品を契約終了日から3か月間に限り非独占的に日本国内で販売することを妨げない。
この条項に違反した場合の損害額,例えば「販売禁止期間以後に販売した商品数の総価格を賠償する」といった文言を契約書に入れておくことをお勧めする。
東京地裁H21.8.5(2009WLJPCA08058002)は,制定購入契約,競業避止義務などを認めて,違反者に15億円の支払いを命じている。