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№2432 執行役員の地位

 有能な社員を執行役員として重役に抜擢する場合がある。特定の部門を執行に責任を持たせるという点,重役として明確に経営側の位置づけを持たせるという点,そして,アメリカの会社組織にならって取締役とは別に執行役員を設けることで経営の効率化を図ろうというものだ。
 米国では執行役員をOfficer,最高執行責任者Chief Executive Officer(CEO)となる。ちなみに取締役はDirectorだ。

 しかし,実際には日本では法律上の位置づけについてはあいまいだ。①会社法上の取締役である場合(363条1項),②従業員の職位でしかない場合,③一旦退職した上で,経営を委任するという場合もある。この法律上の考え方は報酬などの労働条件がどのように当てはまるかという点で分かれてくることになる。

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会社法上の取締役である場合
 会社法にいう取締役である場合には,会社法の規定に従う。取締役と会社との関係は一般に準委任関係と呼ばれる。労働法は適用されない。高額な報酬になるだろうが,一方で株主総会決議でいつでも解任できる。但し,任期途中で正当な理由無く解任された場合には賠償問題は発生する。

取締役の報酬,退職金などについて特別な規程を持っている場合が少なくない。注意しないといけないのは退職金規程が高額になっている場合があることだ。創業者のための退職金規程がそのまま放置されている例がけっこうある。

 

雇用上の職位でしかない場合
 雇用契約なので労働法が適用される。就業規則なども適用される。執行役員から降格させて一般的な社員となる場合,給料が当然減額されることになる。この場合,労働者の不利益変更になるため正当性がいちおう問題になる。いかなる社員をいかなる職位に置くかについては会社の人事権が幅広く認められているため,執行役員からの降格は比較的容易にできるように思う。
 

執行役員解任についての対応

 もっとも執行役員から見れば,役員になって給料が150万円ぐらいになり,役員から外された途端に50万円ぐらいに減額されてしまうということであればギャップが大きすぎて,裁判したくなってしまうかもしれない。執行役員としての処遇について会社に明確に規定することが必要だ。執行役員になる際して,退職金が支払われている,執行役員の報酬が高額である,あらかじめ退任の時期について本人に予告しておくなどといった対応が必要だろう。東京地裁R2.8.29判決では労働者たる執行役員が解任に伴って給料減額されたことについて違法はないとした。

 

委任契約の可能性
 会社法上の取締役でもなく,労働者でもない執行役員の場合,委任契約となる。この点は会社法上の取締役と変わらないのであるが,解任に際しては株主総会の決議は必要なく,簡単に解任できる。
 最判H19.11.16は当該執行役員の地位が委任契約である可能性を示唆し,一方で役員の退職慰労金請求は必ず支給するとなっていないとして否定した。

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