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№2430 請求書を出しても時効は止まりません

 よくある誤解が,古い債権でも請求書さえ出しておけば保全されるという考え方だ。時効の説明をすると「でも先生,請求書を出していますよ」という反論がある。しかし,請求書では時効の効力は維持されてしまう。

 

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債権の消滅時効は原則5年(但し旧民法の場合は10年)

 一般債権の場合,債権の消滅時効は,次の場合で,いずれか早い時期に時効で消滅する(民法166条1項)。
 ① 知った時から5年間行使しないとき
 ② 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき

 時効期間は債権によっても異なるので注意を要する。例えば労働債権の場合,現時点では3年で時効消滅する。

 

請求書だけでは時効は止まりません

 時効の効力を阻止するためには,裁判上の請求(多くは訴え提起),強制執行などが必要となる。請求書だけの場合,完成直前に出した場合,半年間は完成が猶予されるが,最終的には裁判の提起などが必要となる。

 

債務を承認してもらった場合には時効が更新(中断)されます

 時効の効力を阻止する有力な方法が,「債務の承認」という行為だ。債務者が債務の存在を承認する場合には時効期間は更新され,承認時点から進行を始める(民法152条)。

 

借金の一部の支払い,猶予を求めた場合

 債務の承認と同等の意味を有する行為もまた更新事由となる。例えば,債務の一部を弁済するような場合がそうだし,待ってくれと支払い猶予を求める場合もそうだ。

 何回か借金して,少しずつ返済する場合がある。この場合,債務の承認による時効中断の範囲は複数の債務全体に及ぶ(大判昭和13年6月25日,最判令和2年12月15日)。当事者間では複数の借金のうち少しでも返済しようという意図なので,特別な意図がないかぎり,承認の意思は借金全体に及ぶということだ。

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