「競争しない戦略」を読み始めた。マイケル・ポーターの「戦略」の考えをさらに深め,分かりやすくした教科書的な文献だ。我流でポーターの本を読んできた私にとってはとても役立つ。
競争は社会を進化させる
競争によって業界の質が向上し,時には市場も拡大していく。顧客の多様なニーズにも応えることもできるようになるし,価格低下も実現されていく。一方で,過当な競争により企業が疲弊し,企業の質も劣化する。私たちの弁護士業界においても,過当な鏡像状態にあって,なんとなく業界の質が劣化しているような気がする。
競争志向が強くなりすぎると,顧客志向が犠牲になる
コトラーは顧客志向,顧客価値を追求し競争することが大切だと言う。顧客あっての競争だというのはある意味当たり前だ。私たちの世界は結局のところ売れてなんぼ,顧客の満足があっての社会進歩だ。ドラッカーは企業の目的はただ一つ,顧客の創造にあると言っている。
競争にもいろいろある
ポーターは「業界」を「互いに代替可能な製品をつくっている会社の集団」と定義し,業界内での自社のポジションによって競争の在り方も違うと述べている。業界内で圧倒的に強い立場に立ってれば,他社と吸収,協同関係にたった方が有意だろう。弱い立場ならば,競争しない戦略を選んで,限られた市場を追求するか,強者との連携を図っていくことになるかもしれない。
「競争しないこと」の重要性
どの企業も同じ規模で,同じように競争し合えば,最後は価格競争に陥り,利潤はどんどん低下していく。
逆に,このような完全競争状態から遠いポジションに立てば利潤は上げられる。ポーターは競争要因を解明することにより,いかに競争状態から遠い状態に自社を置くかを目標に競争の戦略を分析した。
戦わずして勝つ
孫子は「戦わずして人の兵を屈するは善の善なる者なり」といい,基本的に戦いは人を消耗させるので,戦わずして勝つことが最上策としていた。合戦状態にあることを前提に,可能な限り安定した状態を維持しつつ,自陣の影響力を拡大することが最上策としてている。