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№2377 税務調査と質問応答記録書

 申告の時期がやってきた。申告が終われば税理士さん税務調査対応に追われることだろう。税務調査にどう対応するかでお客さんの評価は大きく変わる。私の依頼者でも税務調査で税務署と渡り合い、相当量減額させたり、還付を獲得したりすると非常に感謝される。生涯の恩人のように大切にもされる。

 

 特に、こちらのすねに傷があるようなケース、たとえば巨額の重加算税を示唆されてしまうような事例では税理士の力量によって結果が大きく異なる。重加算税はかなりこわい。危ないと思ったら調査対応に高い専門性を持つ税理士に依頼すべきだ。いつも税務署の言いなりになっているような先生ではいけない。

 

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税務調査は任意調査だけど強制?

 ところで、一般的な税務調査は「質問検査権」と言われ、税法に記載されている(国税通則法34条の6など)。建前は任意調査だが、正当な理由なく拒絶すれば罰則を受ける。税務調査のほとんどはこれだが、悪質で金額が大きいと、強制捜査が行われることがある。これはマルサとよばれるもので、この種の案件に出くわすことはめったにない。

 

質問応答記録書

 税務調査では帳簿を見たり、いろいろ質問するのだが、そうした調査の一環として税務職員が「質問応答記録書」というものを作ることがある。これは調査内容をまとめるものだが、その書類に納税者の署名を求めることが少なくない。この署名は原則としてすべきではない。質問検査は検査を受忍し、質問に答えればよいのだから、さらに進んで署名という法的根拠は見当たらない。

 

たとえば、重加算税の場合

 この質問応答記録書は国税不服審判手続きや納税訴訟で利用されてしまう。単なる過少申告の場合には過少申告加算税が課せられるが、さらに「仮装」「隠ぺい」行為があると重加算税というとんでもない処罰が待っている。「仮装」「隠ぺい」となると、どうしても納税者の意図、するつもりだったということを証明しなければならない。

 

質問応答記録書の手引き

 そのような場合、「質問応答記録書」を重視しているようで、「質問応答記録書の手引き」というものを作り(平成26年6月26日)、さらに最近この改訂版が出たようだ。それによると、従来一問一答で作成されることが多かった記録書だが、物語形式で作成することを奨励しているという。この物語形式というのは、刑事事件で作成する供述録取書に相当するもので、あたかも本人が一人ですべてしゃべったように作成されている。これは日本独特の形式で、強制的な自白の温床にもなる。

 

 ともかく、質問応答記録書に署名させようとしているのは、税務署に何か特別な意図があると思った方がよいので署名しないことにこしたことはない。

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