中小企業は独自のノウハウで生き延びているのだが、大企業は製造方法やレシピを教えろとか、図面を出せとかあれこれ無理強いしてその提供を求めてくる。こういうときには独占禁止法を利用して企業と交渉するのも有効だ。
もちろん、正面から戦ったのでは二度と取引されなくなるかもしれないので、担当者に対して陰に陽に「公取にいいつける」を匂わせつつ担当者と交渉することになる。相手が大企業の場合、コンプライアンスがしっかりしているので、こちらの意思が伝われば是正されるし、それで取引がなくなるというようなことはない。要は交渉の方法だ。
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優越的地位の濫用って?
取引先から取引上の優越的な地位を利用して、無理強いをされるような場合、「優越的地位の濫用」といって、独占禁止法違反となり、排除措置命令や課徴金などの対象となる。課徴金がどれくらい強烈かというと、株式会社ラルズは公正取引委員会から12億8713万円の課徴金が課せられた。
(平成31年3月28日)株式会社ラルズに対する審決について(食料品,日用雑貨品,衣料品等の小売業者による優越的地位の濫用事件):公正取引委員会
大企業がノウハウの開示を求めたり、一方的な共同開発契約を求める場合も優越的地位の濫用にあたる場合がある
公正取引委員会は2019年6月「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」を発表した。
(令和元年6月14日)製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書の公表について:公正取引委員会
こんな事例が紹介してある(ほかにもいろいろ)
これらは私たちもよく相談を受ける事例だ。こうした困難な事例では弁護士とよく協議しながら交渉を進めていく必要がある。聞くからにひどい。
■ 営業秘密のレシピを「商品カルテ」に記載させられた挙げ句に模倣品を製造され,取引を停止される(食料品製造業)
■ 金属製品製造業者からの報告であり,ある大口の取引先からめっき加工を受託したところ,自社の特殊なめっき加工を再現できてしまうほどの情報(営業秘密として管理しているPH値,粒度,温度,時間,電気量等の詳細なノウハウ)をQC工程表に無償で記載させられ,当該ノウハウを取引先の内製化のために利用されたという事例
■ ほとんど自社で研究するのに,成果は取引先だけに無償で帰属するという名ばかりの共同研究開発契約を押し付けられる(ゴム製品製造業)