我々弁護士は勉強してなんぼの商売なので日々勉強だ。一つの裁判例からいろいろ学ぶ。さいたま地裁の事例は1000万円超える半導体容器洗浄装置の製造に関する事例だ。この事例では契約内容ですでに勝負が決まっていた。締結時の対応がいかに重要か物語る事例だ。顧問弁護士の存在は小さくない。
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契約解消となり製造関係資料の提供を求められた
5年ほど契約を継続したが値段が合わず、契約が中断した。顧客側は別会社で製造するため、必要な図面、資料の引き渡しを求めてきた。しかし、この資料の中には製造側のノウハウも含まれている。まるごととられるのは製造側としてもつらい。
勝負は契約時に決まっていた
しかし、当事者間では契約終了時に資料をまるごと渡すような内容になっていた。勝負はもう契約時に決まっていたのだ。裁判所は契約事項を理由に引き渡しを命じた(東京地裁H.22.9.15、判タ1346号175頁)。
問題の条文
被告は、本製品の原告への供給が不可能となった場合には、原告自身又は第三者に対する委託による製品の製造を可能とするため、原告の要求に基づき、技術資料、図書等の提供及び返却、その他あらゆる技術援助を原告に行うこととする。
ちょっとした対応でよかったのに
もし、契約時に自社の利益を守りたいと思うのであれば、自社独自に開発したノウハウにかかわる資料は渡さないようにできるとする条項を入れておくことになるだろう。顧客の立場からすれば、この契約条項を入れておいてよかったということになる。勝負は契約時に始まっていることを経営者はよく理解するべきだ。
顧問弁護士とよく相談してほしい
製造業の場合、生産技術は自社の競争力の源泉だ。対応にも注意を要する。顧問弁護士は役立つ存在だ。