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№102 ドバイの不動産取引

中小企業法務 №102 ドバイの不動産取引

 弁護士は顧問先などに報告書を作成することがある。どんな内容になるか紹介したい。いろいろな相談に対してこんな報告書になる。さきごろ,ドバイの不動産取引というめずらしい相談を受けたので,その報告書を紹介しよう。これは,世界を襲っている異常な金融危機が発生する以前の相談である。

                     籠橋 http://www.green-justice.com/

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○ ○ ○ 様

           平成20年○月○日
             名古屋市中村区椿町15番19号 大和生命名古屋ビル2階
             T.052-459-1750 F.052-459-1751
             E-mail  lawyer-kago@green-justice.com
弁護士   籠橋隆明

ドバイ取引について

1. アラブ首長国連邦の土地制度
  既にご存じだと思いますが、アラブ首長国連邦の場合、国土は国王(シェイク)の所有物とされており、欧米流(日本も含む)所有権の発想が無かったようです。この点では社会主義国で国土は国家のものであるという考えの中国と似ているように思われます。国土を利用するには原則として国家の許可が必要であり、その許可が所有権のような役割を果たすというのが本来のドバイも含めたアラブ首長国連邦の土地制度であると考えてよいかと思われます。

2. 経済の多角化、自由化
  ドバイの場合、アラブ首長国連邦の中でも石油埋蔵量が少ないと言われる中で、脱石油社会を目指して積極的な経済投資を進めています。アラブ首長国連邦全体がその傾向に有るのですが、ドバイの場合最も成功した首長国と評価されています。海外からの投資を活発化させ、経済の多角化を実現しようとしております。経済の自由化は当然土地所有権の自由化を不可避としています。そのため、ドバイでは土地投資も進み、異常な不動産価格の上昇が生じているというのが現状です。

3. 経済の自由化と進む土地所有制度
  経済の自由化をもたらすためにドバイでは徐々に土地所有の自由化を進めています。アラブ首長国連邦に所属する国民、企業については全領域について土地用益権の容認、所有権の容認を認めています。
  ドバイの場合、外国企業、外国人に対しても2002年ころから土地所有権を限られた範囲(特定の居住区など)で認めるとしています。これは特定の区域内で一定の割合の範囲内で所有権を認めるというもので、アラブ首長国連邦においては実験的な試みということのようです。法制度も十分ではなく、外国人にとっては不安定な状態の中での一部、所有権の解禁というところではなかったかと思います。

4. 2006年新法令の公布
  2006年になって、ドバイのムハンマド首長〔アラブ首長国連邦UAE)副大統領兼首相〕は、外国人の不動産所有を部分的に認める内容の不動産法を発布しました。これにより、不動産市場の活性化、透明化が期待されています。
  この制度は、所有権を制度化するもので、不動産売買契約、登記、鑑定、競売制度、不動産の品質管理などについて細目を定めていくとしています。これらの制度は土地取引の安定化、透明化をさらに推し進めるもので、ドバイが近代化を進める限り後戻りはないように見受けられます。
  所有権制度の具体化は土地局(Lands Department )が担当しており、現時点で登録制度が整備されつつあるようです。

5. 本件不動産取引
  ご指摘の通り、ドバイの不動産取引が異常に加熱するドバイでは、現物ができる前に売却が始まるというのが特徴のようです。従って、現場を見ないでカタログだけで販売されるという日本では考えられない取引形態となっています。そこで、注意するべき点は次の点にあります。
 ① 仲介業者の質
   これまでの土地取引の実績があるか。できたら、実績のある場所をどなたかに尋ねてもらって、直接訪問するのがよいかと思われます。
 ② 物件の所在地域
   物件の所在地域が外国人であっても所有権を取得できる地域であるかとうか。それまでも外国人の所有する不動産が認められてきたかを確認するとよいと思います。
 ③ 物件の登録
   物件は最終的にどのような形で○○さんの物件と登録されるのか。所有権か、用益権か、賃貸借か知っておく必要があります。登録によって権利がどのように保障されるのか重要な課題となります。
 ④ 万一、建設が中止になった場合の清算はどのようになっているか。解決方式として仲裁手続きを利用しているのか。

以上