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№91 社長の心が弱るとき

 会社の大きなトラブルは社長の心が弱るときに多い。その典型的な例が,経営の悪化だ。経営が悪化するとどうしてもたちの悪い商売に手を出しがちだ。そんなときには失敗も起こる。

 世の中にはトラブルの中で生きている人間もいる。ヤクザなどはその典型例だ。そうでなくとも,トラブルの中でうまく立ち回り,どん欲に利益を得ようとする者もいる。こうした人間の特徴は「気合い」で既成事実を積み上げ,無理に無理をかさねて利益を吸い取っていくところにある。社長音心が強ければ,そんな「気合い」を跳ね返すことはできる。しかし,社長の心が弱いときにはそうはいかず,時には会社にとって致命傷を与えることがある。

 私の依頼者もその一つだった。経営が悪化したために普段に相手にしない業者に製品を供給した。まの悪いもので,その製品に欠陥があった。調子の悪いときは概してそんなものだ。相手の会社の社長は「気合い」で依頼者を責め,製品の回収,さらに損害賠償請求と次から次へと要求していった。要求はエスカレートし,クレーム処理しても売買代金を支払わない,さらに賠償金があると称して工場の機械類に譲渡担保を設定する,債権者からおまえを助けてやると称して工場の名義も移してしまう。弁護士の目から見るとどうしてそこまで,と言いたくなってしまう。

 しかし,こころが弱いという時はそんなものなのだ。社長は強くあらねばならないが,いつも強いわけではない。弁護士は会社が危機に立ったとき,まず,会社の存続を考える。それは社長の気持ちをサポートすることも含まれる。会社の存続の範囲で相手と交渉する。いざとなったら「出るとこ出て戦う」。この依頼者も早い段階に私の相談してくれていれば全く違った解決になっただろう。