黒瀬直宏氏の「中小企業政策」は大変わかりやすい本だ。黒瀬先生の考え方は正しいと思う。中小企業法務のあり方を考えるにあたっては黒瀬先生の考えは大変参考になる。特に第2章,第3章は中小企業政策に関わる者は読んだ方がよい。第2章の章立てはこうだ。
氏の考えは中小企業は顧客との関係でも,雇用の関係でも,企業間取引との関係でも個人,地域と直結しており,その発展が個人が安心して創造的な人生を歩むために不可欠だというものだ。
第2章 中小企業政策の公共性
1 中小企業の役割(経済的役割)
(1) 需要多様分野が舞台(社会的分業上の役割)
※ 画一的な大規模生産が担う分野,個別的で小規模生産でしか担えない分野があり,それは経済全体の棲み分けの問題であるととらえている。
(2) 雇用機会創出の中心(雇用上の役割)
※ 日本では雇用の70%を担っているし,これは国際的傾向である。中小企業の雇用で重要なのは中小企業の創業的姿勢が雇用機会を新たに創出している点である。
(3) 競争と革新の主体(市場機能推進上の役割)
※ 中小企業は経験技術によるイノベーションにより市場の質を高める。
(4) 地域経済の担い手(地域経済での役割)
※ 中小企業の基盤は地域であり,地域の発展は中小企業の発展に直結する。
2 中小企業の役割(社会的役割)
(1) 民主主義の基盤
※ 中小企業の発展は国民の多様な要求を社会経済に反映させる。社会は個性的で意欲的,創造的になり民主主義は推進される。
(2) 多元的な経営価値観の担い手