名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№58 会社の信用は組織? それとも事業?

 事業者にとって社長になることは一つの目標だ。会社は本来,出資者を募ってより大きな事業を行うことが目的だ。もちろん,日本でも同様だが,中小企業の場合出資者を募ることより,ある種のステイタスを勝ち取ることも目的となっている。社会も個人よりも会社を,合名会社や有限会社よりも株式会社を信用する傾向にある。大企業から口座をもらう場合でも法人でなければだめだという例がほとんどだ。
 会社というのはあるようでないような,不思議な存在だ。定款を整え,取締役会を作り,社長を決めれば会社となる。それは,みんなが決めたから会社だ。人間のように体がある訳ではない。法律学の世界では会社は実在するかなどと議論しているが,確かに人の決まり事の中で存在すると言える。だからこそ,古くより法律は会社が組織として確実に機能するよう配慮に配慮を重ねてきた。会社には資本金が必要であり,株式には額面相当の出資が必要で,監査の体制も組んできた。何よりも人と財産が大切でそれらが確実に存在するように法制度はできてきた。そのような積み重ねの結果,我が国では会社という存在は誰も疑わず,信用を勝ち得てきたのだろう。
 ところで,昨今の会社法改正は会社に対する考え方を大きく変えた。それは組織と財産が確実に存在することにより信用を得ていこうという考えから,事業と組織が確実に存在するという考え方で組織の信用を得ていこうという考え方だ。設立は自由にし,最低資本制度は撤廃し,額面と出資金との関係も切断され,額面すらなくなってしまった。1人会社も許し,組織形態は大幅に自由となった。それは,組織としての硬さよりも,事業の継続を重視した法制度であり,どのような堅い組織があっても事業の継続がなければ信用はないし,組織としては緩やかでも事業の継続があれば信用するという考え方だと思う。