名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№57 アメリカ風企業

 日本の会社法明治26年に始まる(商法の始まりは昭和23年)。明治維新が始まり,わずか26年で現代資本主義の単位たる株式会社ができあがったのは驚くばかりだ。当時の商人には新しい時代への挑戦への気概に溢れていたに違いない。かの渋沢栄一が大いに思想を語ったのも,創造性に満ちた時代が背景にあるかもしれない。「論語と算盤」では「その富を成す根源は何かといえば、仁義道徳、正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。」と,儒教と事業と結びつけている。
 こうして明治に始まった会社法はその後も多くの改正が行われた。日本の法律はドイツ会社法の考えを輸入し作られ,戦後に至っても基本的にはヨーロッパ風株式会社である。しかし,資本主義社会の世界チャンピオンであるアメリカの影響は避けられない。平成13年ころから始まった会社法関係法規の改正は耳に新しいことだろう。我々法律家では嵐に襲われるような感じだった。余りのスピードについて行けず,恥ずかしながら一時は勉強を放棄してしまった。
 この一連の改正は当然アメリカ風を意識している。世の中はグローバリゼーションのまっただ中となり,新しい競争原理が求められていた。もはや,市場は国内に限定されず,企業の存在場所は世界各所に広がり,中小企業ですら他国の中小企業と競争しなければならなくなった。堅実で強固な組織を求めたドイツ風会社法は,状況に応じて次々と形が変わる流動正を求めるアメリカ風会社法に変わり,かわって情報公開と外部統制が強化された。
 中小企業は常に変化を求めなければ生きていけない。流動する現場情報をつかみ取り,発信し,そして,揺れ動く国際社会をも現場情報としなければならない。新会社法はこうした中小企業のためにもいろいろと改正が行われている。